感情予測のエラー
「感情予測のエラー」という言葉がある。
僕らというものは、未来の自分の感情を、正確に予測できない。
常にエラーを繰り返しているという話だ。
(良い習慣、悪い習慣―世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法)
先日乗った飛行機で、ティーンエージャーの団体と席が近くなった。見たところ、大半が飛行機は初めてらしい。離陸、眼下のアルプス、乱気流、着陸……すべてがドキドキする体験だ。救命具の説明にさえ興奮している。この若者たちに、将来はそんなもの何とも感じなくなるなんて想像できるだろうか? これが心理学者の言う「感情予測のエラー」である
ハーバード大学のダニエル・ギルバートらは、被験者にネガティブな事象をいくつも示し、それらが自分にどんな影響を及ぼすかを予測してもらった★9。恋人と別れる、子どもが死ぬ物語を読む、不採用通知を受け取る……。何度やっても同じ傾向が見られた。つまり、実際以上に悲しい気持ちになると予測したのである。ポジティブな出来事に対する反応を予測するときも、まったく同じエラーが起こる。昇進、新しい車、新しい恋人……どれもしばらくは人を幸福にするが、じきに慣れが訪れる。 物事の影響を過大評価し続け、その変化に適応し続けているのに、なぜ学習しないのか
この感情予測のエラーは、ものすごく小さなレベルでも繰り返されているということに、僕は最近気付いた。
たとえば、ずっと面倒くさいと思っていた部屋の片付けが、やり始めたら止まらなくなったり。
たとえば、一見入りづらいカフェに入った瞬間、その場所が気に入ってしまったり。
人は膨大な数の予測と、そしてエラーを繰り返している。
これが「感情予測のエラー」だ。
(と僕は理解した)
感情というに限らず、予想エラーというものは頻繁に起こっている。
たとえば「自分は影響は受けないだろうな」と思いながら読んだ本から、人生を変えるような影響を受けたり。
「子供だましだ」と思ったゲームをいざやってみたら、 熱を上げてはまってしまったり。
この「予測エラー」のロジックを理解することは、習慣作りや、自分の行動を決めること全般に役立ちそうだ。
小さな習慣
習慣作りの話をする。
たとえばの話。
「カラダを鍛えるために、腕立て伏せを習慣にしたい」と思っている時。
そして、実際にしてみようとする時。
僕の脳は「腕立て伏せは、苦しいだろうな」という予測をする。
体の中に「苦しそうだな」というリアルな感覚が生まれる。
だけどたとえば、少しだけ試しに、自分の状態を変えてみる。
試しに体を舌に折り曲げて、自分の足先を触ってみる。
その次に、腕立て伏せのポーズだけを取ってみる。
脳と体に対して「ほんの少しだけの変化」を与えてやる。
すると、1秒で「腕立て伏せに対する感情」は、さっきよりもプラスのものに変わってしまう。
「腕立て伏せはまったく恐くない」という体内感覚が生まれるのだ。
すると次の瞬間、気づけば、もう腕立て伏せを始めている自分がいる。
このように、僕らは自分たちの、次の1秒の感覚さえ、正確には予測できない。
予測がエラーを繰り返しているのに、それが正しいと思い込んでいるだけだ。
マインドフルネスと予測エラー
「予測エラー」を理解することは、マインドフルネスの実践に役立つ。
なぜなら予測は常に、未来に対しておこなわれる。
未来予測のせいで、現在から心が遊離することも多い。
だけど「予測はエラーを繰り返す」ということを理解していれば、未来を信用しすぎることを避けられる。
未来予測への依存を減らすことが出来るだろう。
それは「今現在」に生きるための強力な鍵だ。
予測は現実そのものではない。
それさえ体で理解できれば、僕らはもっと怖がらずに、思うような行動ができるはずだ。
予測の罠にはまらずに、自分の進みたい方向に進めるようになるだろう。
瞑想と予測エラー
僕は瞑想中にも、予測エラーを発見する。
たとえば頭が「闘争モード」にあると感じた時、心を落ち着けるために瞑想をする。
その時「たった数十回の呼吸では、とても心は落ち着かないだろうな」という予測を立てる。
だけど30回も呼吸をするうちに、まったく脳や体の状態は変わってしまう。
闘争モードから平穏なモードへと、不思議とスイッチが切り替わる。
30回と言わず、10回、5回の呼吸でも、脳の状態は刻々と変わっていく。
こうやって予測エラーをダイナミックに体験できるのも、瞑想の特徴だ。